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2005年12月10日

マスターズ第9回:1851年ロンドン大会

 昨日TBS「金曜日のスマたちへ」でゲストの作家室井佑月の過去をVTRで再現していた。ネームバリューで作家になったイメージが強かったが、壮絶な紆 余曲折があったのには驚かされた。小手先のテクより人生経験に裏打ちされた真実味で受けているのだろうか。
 私はハングリーであっても、それに平気で安住するからハングリー精神につながらない。自分がやりたいこともやるべきことも分かっているから後は自力を伸 ばして延長線を引くしかない。やりたいことすら分からない人たちよりははるかに先行しているはずなのだが…。


 1851年の国際トーナメントは、同年ロンドンで行われた世界初の万博 にスタントンが触発されたものであった。すべての強豪が招待されたといっても、距 離や経費が障害となったプレーヤーもいる。ロシアのカルル・イェニッシュ(イギリスに着いたのはトーナメントの終わり頃で対戦せず)とアレクサンダー・ペ トロフ。聖アマンはカリフォルニアにいたから不参加だった。
 参加者は自腹でロンドンまで行って5ポンドの参加費を払う。これにスポンサーの支援が加わった優勝賞金は183ポンドだった。大会前に、ハンガリーの ヨーセフ・セーンとドイツのアドルフ・アンデルセンのどちらかが優勝したら賞金の3分の1を負けた方に譲るという密約が発覚し、スタントンを憤慨させた。

 他の参加選手は、ニューヨークからのヨハン・レーヴェンタールとパリからのリョネ・キェゼリツキー、イギリス代表はスタントンと、数年前からロンドンに 住んでいたホルヴィッツ、さらに16人の参加枠を埋めるためにイギリスの強豪が呼ばれた。ハルヴィッツは不可解な理由で参加を拒否した。
 この大会と1895年ヘイスティングズ、1914年セント・ペテルスブルク、1924年ニューヨーク大会は、総当たりではなく勝ち抜き戦だった。スタン トンは3回戦で運悪くアンデルセンと当たって破れる。スタントンは健康と大会運営の疲れが原因だとした。

 『チェスプレーヤー誌』には、当時スタントンが入院したりでチェスどころではなかったと記されている。自分の雑誌があるプレーヤーというのは都合がい い。後の公式大会本に、彼は自由に自戦記を書いた。最初のアンデルセン戦についての記述が典型的である。
 「私の今までのどのマッチのゲームと比べても、これが私のゲームとはクラブの3分の2のプレーヤーにとって信じがたく、名人と言われる二人がしのぎを 削ったものとはほど遠いと思うだろう」。スタントンは独りよがりの分析を続け、局面では勝っていたが「疲労のために」ゲームを投げたと述べている。


 メイソン訳は、やっと「終盤」の最後のクイーンに入った。問題の解説ばかりで飽きてきたので、このまま次の「コンビネーション」も続けるかどうか迷うと ころだ。おもしろい表現としては、Royal Pawnが出てきた。王族筋、つまりd,eファイルのポーンのことである。センターポーンとは、言い方によってずいぶん印象が変わるものだ。
The Chess Tournament - London 1851
1843820897 Howard Staunton

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posted by 水野優 at 13:10| Comment(4) | マスターズ(チェス近代史) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
密約のくだりは面白かったです。意味がよくわからなかったのは「この大会と1895年ヘイスティングズ、1914年セント・ペテルスブルク、1924年ニューヨーク大会は、総当たりではなく勝ち抜き戦だった」のところ。1895年はいわゆるリーグ戦形式の総当り戦。1924年のは対局者が二局づつ指す総当り戦。1914年のがやや複雑ですが、基本はリーグ戦形式で、少なくとも1851年とは異なってると思うのです。
Posted by maro_chronicon at 2005年12月10日 14:31
 ご指摘どもです。ネタ本が甘いのかなあ。ログ化するときに直しておきます。
 そういえばmaroさんはスタントンの『手引書』を高評価されてますね。An illustrated Dictionary of Chessさえまだ買ってないのですが、その手ではやはりOxford Companion to Chessがお薦めでしょうか? 第2版に☆が付いてないのと、もうそろそろ改訂されないかと迷っています。
 今思うと、ニムゾのBlockade、Lasker's Manual of Chess、タラッシュのBest Gamesなど惜しい本を手放してしまったものです。
Posted by 水野優 at 2005年12月11日 13:30
長くなりますが、、、。
チェスとか将棋とか、記事にミスが多いですよね。私もよくします。よほど傲慢か無責任な記述で無い限り、ミスは甘く見てあげて、みんなで訂正し合うのが良い、と思ってます。
An illustrated Dictionary は絵も写真も一枚も無い事典です。内容も薄い。取り得が無いとは言いませんが。
Companion to Chessの初版と2版の好みは人によって分かれるでしょう。当然ながら2版の方が、新しい選手の記事が増補されてるんですが、あんまり役に立たない増補に思えます。むしろ、古い記事が削除されてる方が惜しい。また、代表局の選局センスも初版の方が好きです。
私は、初版は何度か通読したので、いまは2版を日頃一番よく使う、という感じ。三版はもう出ないでしょう。
Companionの欠点は主要大会の結果や参加者がよくわからないことで、この点ではDivinskyがBatsford から出したEncyclopediaの方が良いです。1990年刊。「これ一冊あればOKなんて本はありえない」のは当然とした上で一冊だけを挙げれば私はこれかな。
新しい事典はよく知りません。最近の事柄は手元の雑誌やネットや自身の記憶でほぼ十分です。
フィリドール『分析』とスタントン『手引書』それからシュタイニッツ『Instructor』は、古棋譜を読む時の必携だと思ってます。
Posted by maro_chronicon at 2005年12月11日 22:02
 ありがとうございます。私は大会や人名録が欲しいわけではないんですが(ウェブでかなりのことは分かりますし)、Ealesの歴史書以外その種のものを持ってないのでネタに一冊くらいはと。
 Batsfordのはもう入手できないようですねえ。安いAn illustrated Dictionaryを買いあぐねているのは、発送3〜5週間なので一緒に買う本がないからです(汗。
Posted by 水野優 at 2005年12月12日 13:46
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